ウールはなぜ暖かい?

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冬のコートの素材といえば、ウールですよね。でも、なぜ暖かいのかと聞かれると、意外と答えにくいもの。この記事では、ウールの暖かさの仕組みを資料から見ていきます。タグの「毛 ○%」の読み方も、あわせてまとめました。

ウールの暖かさ、正体は空気?

波のように縮れた羊毛の繊維が幾重にも重なり、すき間に空気を抱えている様子(AI 生成イメージ)
波のように縮れた羊毛の繊維が幾重にも重なり、すき間に空気を抱えている様子(AI 生成イメージ)

カナダ戦争博物館によると、ダッフルは厚手のウール地のコート。二つの世界大戦のころ、水兵の防寒着として広まりました。その暖かさのひみつを、繊維から見てみましょう。

羊毛の繊維は、1本1本が波のように縮れています。百科事典では、この縮れをクリンプス(巻縮)と呼びます。

ワイカト大学の教育サイトの説明はこうです。縮れがかさを生み、繊維のあいだに空気をたっぷりためる。それが、保温性のよさにつながります。羊毛の業界団体 Woolmark の説明も同じです。縮れが動かない空気をため、肌を外の冷えから隔てるそうです。

では、なぜ空気なのでしょう。ザグレブ大学などの研究論文に、こんな数字があります。繊維は、空気より 5〜20 倍も熱を伝えやすいのです。だから、糸や生地、服にとじこめた空気が大事になります。熱を逃がしにくくする働きの、大きな部分を担うからです。

つまり、ウールは空気をためこむのが得意な繊維。重ね着で空気の層をつくる話は、「何度から着る?」の記事にまとめています。

雨ははじくのに、湿気は吸う?

細かな水滴が丸い粒のままのった、クリーム色の羊毛の束のクローズアップ(AI 生成イメージ)
細かな水滴が丸い粒のままのった、クリーム色の羊毛の束のクローズアップ(AI 生成イメージ)

ウールの表面にも、ひみつがあります。百科事典によると、羊毛の表面のスケールは水滴をはじきます。それでいて、湿気は通すのです。

ワイカト大学のサイトも、同じ説明です。表面のろうのような膜が水をはじき、水蒸気は吸い込みます。水滴ははじいて、湿気は吸う。これが、ウールのおもしろいところです。

湿気を含む割合には、法令で決まった値もあります。繊維製品品質表示規程の「公定水分率」です。毛は 15.0%、綿は 8.5%、ナイロンは 4.5%。アクリルは 2.0%、ポリエステルは 0.4% です。この値は、タグの%を計算するときに使う決まりの値です。

雨の日のフードの使い方は、フードの記事へどうぞ。

湿気を吸うと、熱が出る?

明かりのともる部屋から、霧の出た冬の夜道へ開いた玄関と、フックに掛けた紺のダッフルコート(AI 生成イメージ)
明かりのともる部屋から、霧の出た冬の夜道へ開いた玄関と、フックに掛けた紺のダッフルコート(AI 生成イメージ)

ウールには、もう一つの顔があります。湿気を吸うとき、熱を出すのです。

ワイカト大学のサイトは、こんな場面で説明します。暖かい部屋から、冷たく湿った夜の外へ出たとき。ウールのセーターが空気中の水蒸気を吸い、暖かさを保ちます。部屋に戻ると、今度は逆のことが起きるそうです。

研究機関 CSIRO の羊毛の部門は、着て確かめる試験もしています。冬のふつうの条件で、人はこの熱を感じ取れたそうです。ある条件では、アクリルの服よりウールの服を暖かいと評価しました。

熱がいちばん大きいのは、よく乾いた状態から水分を吸うときです。CSIRO の論文は、着る前の準備にも触れています。着る前によく乾かしておくと、この働きをいちばん受けられるそうです。

神奈川県立産業技術総合研究所の報告は、衣服の保温をこう整理します。基本は、静止空気を含むことによる保温。吸湿発熱などは、その上に加える「付加価値」です。暖かさの基本は空気、というわけです。

タグの「毛 100%」、何を表す?

めくった裏地の端にチェック柄がのぞく、コートの内側に縫い付けた無地の小さなタグ(AI 生成イメージ)
めくった裏地の端にチェック柄がのぞく、コートの内側に縫い付けた無地の小さなタグ(AI 生成イメージ)

ウールの割合は、コートのタグで確かめられます。繊維製品品質表示規程では、コートは表生地と裏生地の繊維を表示します。裏生地は、面積などの条件つきです。

タグの%は、重さの割合です。消費者庁の解説によると、書き方は製品全体で示す方法だけではありません。部位を分けて、部位ごとに示す方法もあります。

気をつけたいのは、「毛」の文字です。規程では、羊毛のほか、カシミヤやアルパカ、モヘヤなども「毛」と表示できます。「毛」は、羊毛だけの言葉ではないのです。羊毛なら、「羊毛」「ウール」「WOOL」とも書けます。

100% の表示にも、少し幅があります。「毛 100%」なら、マイナス 3% までが認められています。80% のように 5 の倍数なら、プラスマイナス 5% までです。

ウールが多いほど、暖かい?

テーブルに並べた紺とキャメルの厚手のウール生地の見本と、そばに置いたふわりとした羊毛の束(AI 生成イメージ)
テーブルに並べた紺とキャメルの厚手のウール生地の見本と、そばに置いたふわりとした羊毛の束(AI 生成イメージ)

割合と暖かさの関係も、気になりますよね。百科事典には、ナイロンとの混紡の記述があります。羊毛 70〜80% に、ナイロン 30〜20% を混ぜたものです。風合いや強さとともに、保温性も上がるそうです。

ウール 100% でなければ暖かくない、とは言えないわけです。生地の仕上げにも、暖かさに関わるものがあります。辞典によると、起毛には保温性を上げる効果があります。

タグの割合は、生地の中身を知る手がかりとして読みましょう。メルトンや縮絨、混紡のことは、素材の選び方の記事にまとめています。

まとめ

この下の一覧は、ウール100% とウール80〜99% の商品です。ウールの割合や丈、色、性別でも絞り込めます。

この記事で確かめられなかったこと(8 件)
  • 当サイトはコートを着比べたり、暖かさを試験したりしていません。
  • 吸湿で出る熱が、厚手のコートの暖かさをどれだけ、どのくらいの時間増やすかは、資料が見つかりませんでした。
  • ウールの割合が高いほど暖かい、とする資料は見つかりませんでした。
  • 辞典の混紡の保温性の記述が、何と比べたものかは書かれていませんでした。
  • CSIRO の試験で着た服がコートかどうかは、確かめられませんでした。
  • メルトンなどの厚手のコート地で、水滴をはじく働きが同じように出るかは確かめられませんでした。
  • ダッフル地そのものの保温性を測った資料は見つかりませんでした。
  • 繊維が空気の 5〜20 倍熱を伝えやすいという値の、元の発表は確かめていません。
出典(12 件)
  1. Duffle Coat(Canadian War Museum)
  2. 羊毛(コトバンク)
  3. Wool fibre properties(Science Learning Hub、ワイカト大学)
  4. Wool is naturally breathable(The Woolmark Company)
  5. Measurement Methods of the Thermal Resistance of Materials Used in Clothing(Rogale ほか、Materials、2023)
  6. 繊維製品品質表示規程(消費者庁)
  7. Perception of the Heat of Sorption of Wool(Stuart ほか、Textile Research Journal、1989)
  8. Heating Characteristics of Cordage Fibers(米国標準局 NBS Report 8308、1964)
  9. 寝具及び衣料製品の熱伝導特性(放射及び熱伝導)の評価方法の検討(第1報)(加藤三貴・薩本弥生、神奈川県立産業技術総合研究所 2019 年度 研究報告)
  10. 繊維製品品質表示規程 表示の方法(消費者庁)
  11. 混紡(コトバンク)
  12. 起毛(コトバンク)

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